通報データによる交通事故自動通報システムの効果検討－マクロデータとのマッチングによる自動通報事故の実態把握

摘要

平成25年の日本の交通事故死者数は4,373人，負傷者数に781,494人であった．近年，減少傾向が続いているものの，交通事故によって，未だに多くの犠牲者が出ており，事故後の救命救急についても，死傷者低減策が望まれる．一方，交通事故発生時にエアバッグ展開等に連動して事故発生を自動的に通報するシステムが実用化されており，日本では，ヘルプネットと呼ばれるサービスが提供されている．自動通報を受けたオペレーションセンターでは，事故発生場所やそれまでの走行軌跡を確認することが可能であり，運転者に連絡を取り，必要に応じて，最寄の警察本部や消防本部に接続し，出動を要請する．（図1） このシステムの普及については，内閣府の第9次交通安全基本計画にも謳われているが，広く普及するには至っていない．また，欧州ではこの事故自動通報システムによって，年間の交通事故死者数を2,500人低減することが可能としており，欧州委員会やロシアでは，システムの義務付けを検討している．さらに，国連評29の一般安全分科会（GRSG）の傘下にAECSインフォーマルグループが新設され，国連法規化の議論も開始された．筆者らは，交通事故総合分析センター（以下，ITARDA）の交通事故統合データベース（以下，マクロデータ）を活用し，ヘルプネット自動通報の実態把握とその効果検討を試みた．