蓄熱による変動性再エネの出力調整: 風力熱発電を導入した全国の製紙工場のライフサイクル評価

摘要

変動性再生可能エネルギー（VRE）の導入が求めら れているが、VRE による発電は調整力が必要であり、 系統への接続回答保留や出力抑制といった課題が顕在 化している。VRE の大量導入には大規模な蓄エネル ギーが有効であり、日本での導入量が比較的少ない風 力と蓄熱（Thermal energy storage：TES）を組み合わせ た風力熱発電が提案されている1)。風力熱発電は、風力 由来の回転エネルギーから熱を発生させ、その熱を蓄 熱し、必要に応じて熱やタービンでの発電に利用でき るシステムである。 TES と風力を、生産能力2000 t/d 規模の製紙工場に導 入し、近隣の風力を有効活用するシステムの検討がさ れており、TES や風力の導入規模を適切に設定するこ とで温室効果ガス（GHG）を削減できることがわかっ ている。本研究では、全国の製紙工場にTES と風力を 導入することを想定し、製紙工場が地域のエネルギー 拠点となりうるか、地域の特徴や製紙工場の規模ごと に調査することを目的とする。製紙工場では、化石燃 料や製紙副産物である黒液、廃棄物燃料を用い、自家 発電用のボイラやタービンで熱電併給を行っている。 日本全国に分布する製紙工場とTES、近隣の風力の組 み合わせによるVRE を用いた電力供給インフラを仮定 し、エネルギー収支のシミュレーションにより売電量 とGHG 排出量について分析する。