油状ナノキャリアを用いたスギ花粉症経皮免疫療法の開発

摘要

現在日本人の4人に1人が花粉症患者であると言わ れており、その患者数は年々増加傾向にある。近年、 スギ花粉症の完治が見込める唯一の治療法として免疫 療法が注目されている。免疫療法とは、アレルギーの 原因物質である花粉抗原を少しずつ体内に取り入れて 体を徐々に慣らし、アレルギー反応を抑える緩和療法 である。しかしながら、問題として花粉抗原の投与に よるアナフィラキシーショック等の副作用の危険性が 挙げられる。そこで、本研究では、副作用の危険性が 少ないスギ花粉T 細胞エピトープペプチドを抗原とす る、より安全な花粉症免疫療法を試みた。 また本研究では、従来の注射投与ではなく、安全か つ簡便な経皮投与による花粉症治療を試みた。しかし ながら経皮投与では、皮膚最外層の角層が強力な生体 バリアとして働き、薬物の浸透が大きく阻害されてし まうという問題がある。そこで私は、薬物を界面活性 剤にてコーティングし、肌になじみやすい油中へナノ 分散させることで皮膚浸透性を向上させるSolid-in-Oil(S/O)化技術を導入した(Fig.1)。 スギ花粉T 細胞エピトープペプチドは7 種存在する ことが知られている1)。そこで、本発表ではT 細胞エ ピトープペプチドのうち最も免疫誘導能が高いと考え られるPepA、7 種混合物(7Crp)、及びスギ花粉抗原 をそれぞれS/O 製剤化し、治療効果について比較、検 討を行った。