ヘパリン導入ファイバーの開発と固定化増殖因子による末梢 神経再生

摘要

長距離末梢神経欠損(数cm)の治療のために、自家 神経移植が行われている。この治療法は、移植組織由 来の細胞外マトリックス(ECM)等の機能性分子により 高い再生促進効果を有する反面、麻痺等の合併症が危 惧される。自家神経の代替として、チューブ構造体と 内腔に充填された足場基材で構成される「人工神経」 の移植による治療が試みられている1)。本研究では、 増殖因子との結合親和性を有するヘパリンを配向性 ファイバーに固定化したヘパリン導入ファイバーの開 発を目指した。本基材は、配向性により神経突起の伸 長方向を制御することで、欠損部における最短経路で の神経突起再伸長を可能にする。また、チューブ内部 で増殖因子の局所密度を長期的に高く維持することで、 増殖因子による再生促進シグナルを供給可能にする。 今回は、高い力学的強度を有する生分解性合成高分 子であるポリカプロラクトン(PCL)と細胞接着部位の 提供を担うECM 由来天然高分子であるGelatin から成 る配向性ファイバーを作製後ヘパリンの導入を行った。 また、神経再生に有効な複数種の増殖因子の固定化能 評価及び神経モデル細胞を用いた有効性評価を行った。