新しいバイオマテリアル：脱細胞化生体組織

摘要

再生医療の主要因子は、細胞、増殖因子、足場材料（Scaffold）の3つである。このうち、前2者については、細胞生物学、分子生物学を基盤に発展を遂げている。一方、Scaffoldは当初、ポリ乳酸などの生分解性材料およぴコラーゲン、ゼラチンなどの生物由来材料を用いて構築されてきたが、近年は、加工技術に注目が集まっており、材料そのものの進歩は停滞している。iPS細胞の発見により再生医療の実用化が現実味を帯びろとともにScaffoldへの要求も高まっており、新しい材料の登場が望まれている。このような背景のもと、生体組織から細胞成分を除去した脱細胞化生体組織（図1）が注目を集めている。生体組織そのものをSca飴1dとして用いようとする試みは、特に米国の組織バンクによって古くから行われていた。これは、ヒトの血管、心臓弁などから細胞組織を除去した組織のみを用いて移植を行うものである。これが同種組織の不足から異種（主としてブタ、ウシ）組織の応用が検討され、現在では脱細胞化異種組織が主流になりつつある。