マイクロ波伝播経路モデルの高度化による埋設物情報の高精度推定

摘要

トンネルや橋梁·ビルなどのコンクリート建造物の健全度診断や耐震強度調査あるいは耐震偽装問題といった社会問題への対応，また身近なところでは修繕のための事前調査など，コンクリート建造物内部の非破壊診断技術に対する社会的ニーズは日々高まっている．そのための非破壊探査技術にはX線透過法や電磁誘導法などがあるが，前者はかぶり厚(物体の埋設深度)が測れず，また後者はかぶり厚と形状の同時測定が難しいなどの技術的な問題を抱えており，有効な手法の確立が望まれている状況にある．これらに対してマイクロ波レーダ法は，かぶり厚·形状が測定可能なほか，作業性などの側面でも優位性をもち，近年ではアレイアンテナを用いた広範囲の探査情報から内部構造を3次元的に可視化する技術などの研究も盛hである．反面，一般的に主流であるBモードレーダ画像からは内部断面構造を正確に推定することが難しく，画像鮮鋭化のための新しい信号·画像処理技術が提案されているほか，内部断面構造を直接的に高精度推定する方法に関する研究なども僅かに見られるに留まっている．本研究の目標は，コンクリート建造物内部断面構造の高精度推定法をマイクロ波レーダ法を基盤として確立することにある．そのためにはいくつもの課題が残されているが，本報告では新たなマイクロ波伝播経路モデルを提案し，内部断面構造(構造物内部の2次元的断面構造，すなわち埋設物の位置·形状情報)を高精度に推定するための方法について議論する．