キレート配位子を鋳型とするナノ多孔性 TiO2-ZrO2複合膜の作製と特性評価

摘要

セラミック膜は機械的強度·耐薬品性·耐熱性が高 いという利点があり，SiO2膜，TiO2膜，ZrO2膜などの 開発·研究が行われている．アモルファス SiO2膜はナ ノからサブナノサイズの細孔径制御が可能であるが． SiO2は水にさらされることによって溶解や緻密化が起 こり，膜性能が低下することが報告されている1) ．一 方，TiO2や ZrO2にといったセラミック材料は，耐水性 にも優れ，UF 膜や NF 膜として各種廃液処理などに 実用化されている．しかし，これらは結晶性材料であ るため微細な細孔径の制御が難しく，また，細孔径の 減少に伴って，特に NF 領域で透過量が減少するとい う問題点がある2) ．近年，TiO2と ZrO2を複合化さ せ,Ti と Zr に配位するキレート配位子を加えること によって，ゾル調製時の反応性を抑制し，飛躍的に微 細な細孔径の制御が容易になることが報告された1,3) ． 本研究では，TiO2-ZrO2複合ゾルに様々なキレート配 位子を加えることによって，コロイド粒径がナノサイ ズで制御された安定なゾルを作製し，支持体に塗布· 焼成することで TiO2-ZrO2複合膜を作製した．この時， 高温焼成により焼失させたキレート配位子を鋳型とす る細孔を形成させ，キレート配位子が細孔構造および 透水性·溶質の阻止性に与える影響ついて検討した.