メカニカルァロイングを用いたβ型鉄シリサイドの合成

摘要

廃熱回収技術の一つとして熱電変換がある。現在，熱電変換材料として実用化を迎えているものにBi-Te系半導体がある。しかし，Bi, Teは稀少金属であり，毒性があるために廃棄する際には産業廃棄物として処理せねばならず，市場拡大が極めて難しい。そこで本研究では，枯渴しにくい鉄（Fe)，ケィ素（Si)からなる鉄シリサイドFeSi_2系の内で，熱電変換効率および性能指数が比較的高いβ型鉄シリサイド（β-FeSi_2)注目した。Bi-Te系と比較して性能指数は小さレヽが，原材料が比較的安価で，800°Cまで酸化しにくく高温での使用が可能等であるので，性能コスト比がより大きいと考えられる。かFeSi_2の作製には一般的に溶解法が用いられる力^高温を必要し，しかもβ-FeSi_2単相を得ることは困難であることが欠点である。そこで本研究では室温で遊星型ボールミルを用いたメカ二力ルァロイング（MA)によりFe， Si粒子からの 〃-FeSi_2の合成を試みてきた。前回までに，Si粒子が破断されるとs-FeSiが生成され易いが，ボールとポット内壁間の原材料の圧縮および摩擦により β-FeSi_2の合成が促進されることを明らかにした。しカゝし，合成に長時間を要することと，ε-FeSiも合成される課題があった。そこで，今回は，提案した合成機構をもとに，β-FeSi_2の合成比率を向上させるために，圧縮および摩擦を促進する要因としてボールの質量，投入量，回転速度を変化させて合成を行い良好な結果を得たので報告する。