Al-7％Si鋳造合金のミクロ組織と機械的性質

摘要

亜共晶Al-7％Si鋳造合金は良好な機械的性質を示しながら，製品設計における形状自由度が高いことから，現在，輸送機器の様々な部品へと適用範囲を広げている．自動車の足回り部材などの重要保安部品に鋳造合金を適用する場合，強度と信頼性の向上が必要である。Al－7％Si合金では微量不純物元素であるリン(P)によって共晶凝固部のシリコン（Sり粒子の形態が変化することが知られているが，現在，Pは合金規格で規制されておらず，PのSi核生成作用（化合物AlPがSiの生成の核となる）を無くすために，ストロンチウム（Sr)等の改良処理剤を添加することによる，共晶ミクロ組織の改良を必要としている．改良処理剤の添加量は原材料から不純物として混入するP含有量が常に一定ではないために添加量の調整が難しく，しばしば，過不足となり合金強度にばらつきを生じさせてしまう．一方，Pを極力低減すると，Siの優先核生成物質がないため，Sr添加時と同様の改良組織となる．このP低減材はSr改良処理材と比べ，製造時のばらつきも少なく、強度延性，そして低サイクル疲労において優れた特性を示すことが見出されている1）．（Fig.1，Fig．2）しかしながら，顕微鏡観察によるミクロ組織にそれほど違いがなく，機械的性質が異なるメカニズムは明らかではない．そこで，本研究では，異なる量のPとSrの微量添加により機械的性質の違いを示すAl-7％Si合金について，放射光CTにより共晶Si粒子の形態および空間配置，Sr系化合物の空間分布を調査した．