Ｘ線粉末回折データからのイーリマイト（Ca4Al6O_(12)SO4 固溶体） の不規則構造解析

摘要

ビーライト?イーリマイト?フェライトセメントの主要な構成相であるイーリマイトは、 Ca4[Al6O12]SO4 にNa2O やFe2O3 成分を含む固溶体であり、広義のソーダライト（Na4[Al3Si3O12]Cl）に属する。 Andac とGlasser [1]はCa4[Al6O12]SO4 が470°C 付近で相転移を起こすことを初めて報告した。低温相の結晶構 造（空間群Pcc2）はCuesta ら [2]がX 線粉末回折法（XRPD）で決定し、Kurokawa ら [3]は高温相の結晶構 造（空間群I4 ? 3m）をXRPD とラマン分光法を併用して解析した。後者の結晶構造は、S 原子に配位するO 原 子の位置不規則性によって特徴付けられる。Banno ら [4]はCa4[Al6O12]SO4 の類縁化合物であるSr4[Al6O12]SO4 が、246°C 付近の昇温過程で斜方晶系から立方晶系へ相転移を起こすことを報告し、さらに低温相と高温相 の結晶構造をXRPD データから決定した。Cuesta ら [5]はCa4[Al6O12]SO4 にNa2O やFe2O3、SiO2 成分が固溶 すると考え、Ca3.8Na0.2Al5.6Fe0.2Si0.2SO16 組成の多結晶体を準備し、収集したXRPD データをリートベルト法で 解析して結晶構造を報告した。解析はKurokawa ら [3]が報告した不規則構造を初期モデルとして採用してお り、Ca4[Al6O12]SO4 の高温相と同一の原子配列を示す。本研究では、先ずイーリマイト単相の多結晶体を作製 し、高精度なXRPD データを収集した後、MPF 法を駆使してイーリマイトの不規則構造を解析した。