実験室X線粉末回折データからの未知構造と不規則構造の解析

摘要

粉末回折データから未知の結晶構造を決定するためには，化学組成の均一な単相の試料を準備することが望ましい。ただし，不純物相が混入した試料でも，回折パターン全体を解析対象とするPawley法やLe Bail法で未知構造物質からの回折強度を選択的に抽出できれば，これらを初期構造モデルの導出に用いることができる。例えば新規な層状炭化物ZrAl_8C_7の結晶構造は，既知化合物のZrAl_4C_4が17.0mass％共存する粉末試料を用いて決定された。 単成分で対称の高い物質に限られていた粉末回折データからの結晶構造解析が，解析法と実験室回折装置の進歩によって，複雑な不規則構造や低対称の混合相を比較的容易に解析できるようになった。 今後，粉末回折データしか得られない物質の構造解析が盛hに行われ，新たな材料開発が進展すると期待される。