光学的匂い検知プローブを用いた匂いイメージセンサの開発

摘要

「匂い」や「香り」は、直接的に人間の原始感情といわれる快感や不快感を生起させる。近年、快適な生活環境を求める社会背景から人の実生活における周囲環境の「匂い」や「香り」の効果に対する注目度は大きい。しかし、人は匂いを見ることができず、匂いそのものを定量し、分類する定義が確立されていないことから匂い情報の伝達は困難である。そのため、匂いを測るための匂いセンサが求められている。現存する匂いセンサは、酸化物半導体ガスセンサやQCMセンサなどをアレイ化することで様々な匂いを検出·識別可能とするe-noseが代表的である。しかし、個々のセンサにおける匂いの識別能は低いため、最終的な物質選択性は特異的なレセブタを有する生物の嗅覚と比較すると非常に低い。また、匂いの存在を確認することは可能であるが、風向計などの物理センサを組み合わせなければ匂いの空間分布を検知することができない。匂いの空間分布の検知は、工場プラントにおいて、有害物質が有する匂いから匂いの追跡及び匂い源の特定を行うことができることから、有害物質が漏洩した際に迅速な対応が可能となるため非常に有用である。そこで、本研究では、匂いの「存在」や「空間分布」、「流れ」といった空間化学情報を可視化する光学的匂い検知プローブを用いた匂いイメージセンサの開発を目指している。光学的匂い検知プローブとして、蛍光色素を用いる。蛍光色素は、匂い分子と近接することで相互作用が起こり、エネルギーの授受が生じる。その現象に伴い、蛍光強度やスペクトルが変化し、その蛍光変化を用いることで匂いの検知が可能となる。