消火剤投てきを目指したクアッドロータの飛行制御

摘要

研究では，クアッドロータを用いて消火剤(SAT119)を懸架し熱源に投てきする飛行制御の実現を目的とする．一般にヘリコプターによる山火事などの消火活動では，消火用バケツや胴体下部取付式消火装置を使用している．しかし，この方法ではヘリコプターが熱源から遠くを飛行しているため風などの外乱によって消火剤の拡散による消火効率は低下する恐れがある．消火効率を向上させるためには熱源への接近が考えられる. しかし，機体の耐久性の観点より熱源への接近は困難である．別の消火方法としてJason Mooreは，クアッドロータ本体にホースを取り付けた消火活動を実現している．この方法では，ノズルから放水したときに生じる反発力を打ち消すように機体が制御されている．しかし，この方法ではホースが地上と繋がっているためクアッドロータの移動可能な範囲はホースの長さに依存してしまう．本研究ではSAT119を熱源に向けて投げ込むことを考える．SAT119とは熱源に投げ入れる消火剤であり，容器の材質は硬質塩化ビニールで割れやすいためクアッドロータで吊るして熱源に投げ入れることでその地点から適度な距離を保ちながら消火できる．消火活動実現にSAT119を前後に振って目標位置へ投てきするため，消火剤が投てきされた直後の初速度を考慮する必要がある．さらに投げ出し動作後に機体の姿勢を安定化させる制御が必要となる．これらの問題点を解決するためにProjection Method（以下PJ法）を用いて消火剤を懸架したクアッドロータ1機のモデルを導出する．消火剤を懸架したクアッドロータのモデルを用いてシミュレーションすることで消火剤の投てき直後における傾き角度と初速度を算出し，落下位置を推定する．そして，張力や遠心力を考慮した投てき制御系を設計する．同時に投てき後に機体を安定化させる制御器の設計も行う．本稿ではクアッドロータ1機のモデルをラグランジュの運動方程式を用いて導出し，消火剤をロープを用いて懸架したクアッドロータのモデルも導出する．さらに，ロータで発生する揚力と回転数の動的モデルを複数のステップ応答から導出する．そして3次元空間での消火剤をロープで懸架したクアッドロータのモデルをPJ法で導出する．さらに，シミュレーションで構築したモデルが妥当か確認する．