レトロフィット制御器の状態空間における補償構造と双対性

摘要

本稿では大規模ネットワーク系の制御を考える．大規模系に対する制御器設計法は数多く提案されているがし，ほとhどの手法では全系のモデル情報が制御器設計に利用可能ということを前提としている．しかしながら，実際の大規模ネットワーク系では全系のモデルが得られないことも多い．例えば電力系統の場合，複数の独立系統運用機関が存在し，それぞれが自らの担当範囲内のシステムモデルだけを用いて制御器を設計している．このため，標準的な大規模系の制御手法，例えば分散制御はこのような場合適用不可能である．さらに，もしもある運用機関がある時点で全系のモデルを得たとしても，他の運用機関によってシステムは変化し得るため，常に全系のモデルを取得することはほとhど不可能である．以上の問題は文献によって指摘され，このように全系のモデル情報を仮定しない制御器設計を分散設計とよぶ．分散設計のための具体的な手法に関する研究はきわめて少なく（例えば文献），一般的手法の確立には至っていない．