広視野角HMDを用いたリハビリテーションシステムにおける仮想の肢の視覚情報が使用者に与える影響

摘要

脳梗塞·脳卒中等により低下した四肢の運動機能の回復を目的としたリハビリテーションには，川平らによる促通反復療法［1］や，直接四肢を動かすことを補助するようなシステムを用いたリハビリテーション手法がある．その他に，視覚情報を提示することにより，運動機能の回復を図る手法もある．その代表的な例として，Ramachandranらにより考案された鏡療法［2］がよく知られ，また治療効果も報告されている．この治療手法において患者は，一般的な運動機能が損なわれた側（患側）の肢を動かす方法ではなく，鏡によって作られた患側の肢のように見える像の動作を見るという行為を行う．そのため，リハビリテーションにおける患者の苦痛や負担が少ない点は非常に有望である．この治療手法において体性感覚と視覚像の一致が，重要な要因の一つであると考えられている［3］．この体性感覚と視覚像の一致は，視覚情報を患者に提示して運動機能を回復しようという類似のリハビリテーションにおいても同様に重要と考えられる．