培養骨芽細胞の増殖·分化に対するランダムパルス列電磁場の刺激効果

摘要

近年，患者から採取した幹細胞を骨芽細胞へと分化·増殖させ，この細胞から作製した再生培養組織を再び患者に移植する再生医療技術が期待されている．自身の細胞から作製された再生培養組織は，移植患者に対する生体適合性が良いだけではなく，臓器移植に伴う倫理·法的諸問題を克服できる可能性がある．硬組織において，石灰化促成因子として力学的刺激などの物理的刺激を与えることで再生培養骨の石灰化を促進する試みも行われているものの，物理的刺激による石灰化促進メカニズムは十分に解明されてない．一方，我々は，神経系で観察されるランダム性や揺らぎを有する伝達信号の形態や中枢神経系の活動が骨代謝に関与していることに着目した．そしてこれまでに，ランダムパルス列波形を有する電磁場刺激が培養骨芽細胞の石灰化応答の促進に有効であることを明らかにしてきた．しかしながら，ランダムパルス列電磁場刺激が石灰化促進効果を決定しているメカニズムは不明である．本研究では，骨芽細胞が石灰化へ向かうどの段階に対しランダムパルス列電磁場刺激が作用しているかを明らかにするために，細胞増殖段階と骨芽細胞分化の初期に生じるアルカリ性フォスファターゼ（ALP; Alkaline phosphates）活性段階に着目し，これらの段階に与えるランダムパルス列電磁場刺激の影響を調べることを目的とした．