熱可塑性エラストマーによるヤモリを模倣した接着フィルムの作製

摘要

ヤモリの足裏には、セータと呼ばれるミクロンスケールの繊維状構造物が密集している。その先にスパチュラと呼ばれるナノスケールの平らな構造物があり、接触した面どの間にVan der Waals力を働かせることで被着対象を選ばない接着を可能としている。このように、化学物質を使用せず、表面の形状によって接着を達成できるという特徴は、環境負荷の低減という観点からも非常に興味深い。そのため、近年、この構造を模倣する試みが注目を集めている。先行研究は多数存在するが、作製方法が多段階かつ複雑であるため大量生産は困難である。そこで、本研究では簡便な方法でヤモリを模倣した接着材料を作製することを目的とした。加工性と被着体表面への追従性に優れている熱可塑性エラストマーを用い、スクリーンメッシュ(SM) による転写加工を施すことで試料表面への多数の柱状構造の作製を試み、その接着挙動について検討を行った。