頑健なブレンド処理のための立体形状の条件およびこれに基づくブレンド構成法について（第3報）－実験システムの構築と評価

摘要

ブレンド処理研究は長い歴史を持ち，多くの研究が行われているが，課題も多い．その一つが面延長の問題である．実際ブレンドの内部処理を見ると，ブレンド面の作成だけではなく，様々な曲面の延長処理を行っている．例えば，稜線のブレンドにおいて，両側の面分の一方が稜線に比べ短く，そのまま両側の面分を構成する曲面のオフセット処理と交線処理を行って作成されるブレンド面では，必要とされる領域を埋めることができない．このため両側の曲面の延長処理が必要となっている．曲面が平面などの単純な曲面であれば延長は簡単であるが，自由曲面の延長処理は簡単ではない．この結果，ブレンド処理が，ブレンド面作成処理以前の曲面の延長処理で，処理が不安定になる．もう一つが蓋面(capping face) の問題である．面延長を行って，ブレンド面を作成しても，その両端の頂点において頂点で隣接する面分による領域の補填が必要となり，ブレンド面のままでは領域を埋めることができないことがある．この場合においても，面の延長処理が必要となっている．一般に，境界表現による形状モデルでは，対象の形状モデルが持つ幾何データや形状処理命令のパラメータとして入力された情報からは算出できない幾何領域（ブレンド処理における両側の面の延長部分や蓋面等）が，その形状処理において本質的に必要となる場合がある．筆者らは，稜線で囲まれた範囲を超えた面分の領域（拡大面分）を，作業者が明示的に定義·参照が可能であり，かつ，形状処理命令群が，この領域を利用することが可能な，新たな形状モデル表現の提案と，このモデル表現に基づいて，稜線ブレンドの処理を安定的に行うための構造を前前報で提案した．また，前報では，この構造と稜線ブレンド処理を利用した新しい頂点ブレンドの手法を提案した．本報では，産業技術総合研究所で開発したプログラム開発環境MZ Platform 上にjava で実験システムを構築し，提案手法の検証結果を報告する．