繰返し塑性変形が残留応力緩和挙動と疲労き裂発生寿命に与える影響に関する数値解析的検討

摘要

各種材料および構造物に繰返し荷重を加えると，ヒステリシス·ループやラチェット現象などの非弾性応答が計測され，その大きさと疲労き裂発生や破断寿命との相関の高さが確終されている。これらの材料応答を高精度に予測し，任意形状の構造物の疲労寿命の予測に繋げるためには，材料の繰返し塑性応答を予測可能な材料モデルの開発と，そのモデルを用いた高精度·高効率な有限要素（FE）解析ツールの開発が不可欠である。一方，これまでに著者らは，低サイクル疲労に限定されず，一般に高サイクル疲労となる巨視的弾性条件下にも適用可能な繰返し弾塑性モデルを提案し，実験結果との照査によりその適用性の高さを示している。さらに近年，ABAQUS（汎用FE解析ツール）用ユーザサブルーチンを開発し，その精度検証を行なった結晃計算効率の高さが示された。本研究では，まず繰返し応力に対する材料モデルの応答を把握する。次に具体的境界条件におけるモデル挙動の把握を目的として，非荷重伝達型十字溶接継手を採用し，圧縮荷重により導入した引張残留応力が繰返し応力に伴って減少する挙動やヒステリシス·ループの全ひずみ範囲により推定される疲労寿命の予測精度などに関して考察を行う。