視覚皮質の層構造マイクロサーキットモデル－視覚刺激と注意による変調

摘要

外界から得られる膨大な視覚情報は、大脳皮質の視覚野にて処理される。その際、生体は視野内にあるすべての情報を均等に処理しているわけではない。最も注目すべき情報に焦点を当て、それを重点的に処理している。この機能が視覚的注意である。注意は、視覚情報処理に重要な変調をもたらす。我々は、注意が視覚野の皮質層の機能に与える影響を、マイクロサーキットモデルを用いた大規模シミュレーションを通じ、検討した。Bottom-up的な視覚情報が与えられる詳細な層構造のマイクロサーキットモデルに、top-down的な視覚的注意を適用し、その反応と変調を、サルを用いた生理実験の結果と比較した。モデルは、視覚刺激の呈示による抑制作用と注意による反応の回復を良く再現した。これらの結果は、視覚的注意が皮質層の視覚処理に果たす重要な役割を予測する。