ロボットを用いた生体神経回路網の身体性

摘要

究極的な目標として、実世界において安定して動作する完全自律エージェントの実現と言う工学的課題がある。ロボティクス·エージェントなどの分野では当たり前の議論となってしまうが、これが難しいのは、フレーム問題、記号接地問題等の解決を前提とするからである。これらの問題に関しては身体性認知科学の枠組みが有効である。身体性という概念には身体を通した実世界との関わり方を規定する様式が含まれているが、この様式を適切にデザインすることが自律的な知能を開発するために重要である。我々は、生体の神経回路網と、その身体としての小型移動ロボットを接続して外界と相互作用するシステムを確立した。このシステムの挙動と神経回路網に誘発される変化を観察することで、生体神経回路網にとっての適切な身体性とは何かと言うことを考察してきた。神経回路網への外界からの入力により、各神経細胞の活動頻度の分散が調整されることを見いだしたが、これがシステムの挙動にとってどのような意味を持つかは、あくまで神経回路網がシステムの中にどのような形で組み込まれているかに依存する。