閉じ込めによって誘起される潤滑油固化の抑制：無灰系分散剤の効果

摘要

地球温暖化対策のため、エネルギー効率向上を目的として、機械要素の摩擦損失の低減が求められている。自動車の場合、燃料の燃焼により発生するエネルギーのうち約16.5%がエンジンまたはトランスミッション内部の摩擦によって失われており、摩擦損失の低減による燃費改善が期待されている。自動車の燃費に関しては、1970年代から世界各国で規制が導入されており、その規制基準値は厳しくなる一方である。また、近年、電力会社にも二酸化炭素排出規制を課す国が現れている。エネルギー効率向上のための規制は、その質·範囲ともに拡大の一途を辿っており、機械要素の摩擦損失の低減が必要である。本研究では、この固化抑制効果と摩擦低減効果の関係を解明するため、FMとして用いられる各種の無灰系(金属元素を含まない)添加剤に加え、同じく無灰系で界面活性剤であり分散剤として用いられるポリブテニルコハク酸イミドについて、その作用を検討した。その結果、ナノ空間における固化抑制効果が、マクロスケールでの摩擦低減効果の起源となっていることを示唆する知見を得た。