ナノメートルオーダの微小隙間でせh断されるポリ α オレフィン油の粘性の温度依存性計測

摘要

自動車によるエネルギー消費量が近年急増しており，エネルギー資源保護の観点から燃費の向上が必要とされている．燃費向上にはエンジン内部の摩擦損失の低減が技術的課題の一つであり，低粘度のエンジン潤滑油の使用が最も効果的である．しかし，低粘度油は負荷容量が小さいため，しゆう動部材間の隙間が狭小化する．潤滑設計には潤滑油の粘度が基本パラメータの一つとなるが，微小な隙間に介在する潤滑剤の力学特性はバルク状態と異なることが知られており，未だ十分に解明されていない．特に，ナノメートルオーダの微小隙間（ナノ隙間）では顕著な粘度上昇や固体化が起こると報告されている．また，エンジン潤滑油には高粘度指数のポリαオレフィン（PAO）油の使用が広まっているが，ナノ隙間における温度特性を定量化する方法は末だ確立されていない．そこで本研究では，ポリ α オレフィン（PAO）油について，ナノ隙間における粘性の定量化および温度依存性を明らかにすることを目的とした．粘性計測には，従来研究で開発したファイバーウォブリング法を用いた．ただし，従来装置では試料の温度制御ができないため，ベルチェ素子を用いた温度制御ステージを導入した測定系を新たに構築した．