CN_x 膜とDLC 膜のSiC に対するトライボロジー特性に及ぼす温度の影響

摘要

ポンプの軸封装置としてメカニカルシールが使用されている．ポンプ用メカニカルシールの材質には，従来は耐摩耗性の高いSiC（炭化ケイ素）同士の組み合わせや摺動性の良いSiC と焼結カーボンの組み合わせなどが，面圧，速度及び使用環境の温度により選定され使用されてきた．メカニカルシールに今後要求される性能として，長寿命化，高信頼性化，高温環境下での使用及び非水冷化が考えられる．特に高温環境下では，シール面に液膜を維持することが難しく無潤滑接触になる可能性が高い．その結果シール面間の高温化及びシール面での摩擦力の増大が起こる．よって，高温環境かつ無潤滑下における低摩擦及び耐摩耗性の両立が今後の課題である．このような材料の候補として炭素系硬質薄膜があげられる．そして，炭素系硬質薄膜の耐熱性は約440°C程度と報告されている．本研究で扱う約140°C環境は耐熱温度以下であることから，使用可能と考えられるが，相手材をSiC とした場合の定量的な種々のDLC 膜の摩擦摩耗特性の比較評価は詳細に行われていない．本研究では，従来のポンプ用メカニカルシールとして使用される焼結カーボン及び種々のDLC 膜とSiC の組合せの摩擦試験を行い，メカニカルシール用材料としてのDLC 膜の使用可能性を明らかにした．具体的にはta-C，a-C:H 及びCN_x 成膜球のSiC ディスクに対する摩擦係数と比摩耗量に及ぼすディスク温度の影響及びその原因を明らかにする．