エラストマー境界摩擦に関する一考察

摘要

エラストマーの液体中の摩擦機構については，不明な点が多い．液体中では，液体によって潤滑されるだけで無く，相手面への凝着の抑制あるいは促進，液体の界面への流入や排出など様々な現象が発生し，それらに伴い複雑な摩擦特性を引き起こす．例えば，最近エラストマーにおいて混合·境界領域の摩擦係数が，液体中の界面エネルギーを表す拡張係数の絶対値（液体中の凝着仕事に相当）に影響を受け，その値の増加によって摩擦も増加することが報告されている．しかし，そのような液体中の境界摩擦が，どのような機構によって発生し，そこに拡張仕事がどのように関係しているのかについて，今の十分解明できていないのが現状である．そこで，この摩擦機構に対して著者らが提案したエラストマーの凝着摩擦モデルを液体中の摩擦に拡張し，分子鎖の運動や相手面への吸着現象に及ぼす影響に着目した思考実験を通じ，摩擦特性についての考察を行った．