分子性金属酸化物クラスターを基盤とした高効率触媒反応系の開発

摘要

21世紀における持続可能な社会の実現には、真に力量ある触媒（固体触媒が望ましい）の開発が必要不可欠であるが、金属酸化物触媒や担持金属触媒は混合物あるいは非晶質であり、試行錯誤で触媒が探索されてきた。これに対し我々は、分子性酸化物クラスターであるポリオキソメタレート（以後POMと略する）の特長を巧みに利用し、原子·分子レベルで活性点設計された高機能触媒を開発した。すなわち、「分子鋳型」となる欠損型POMを合成し、その欠損部位に金属種を個数や配位様式を制御して導入することで原子·分子レベルで活性点設計された「POM分子触媒」を開発した。さらに、分子触媒を適切な担体上に固定化、適切なカウンターカチオンと複合化することにより固体化、あるいは、分子触媒で得られた情報を基に酸化物表面上に活性点構造を創製することで、分子触媒の有する特異的な活性·選択性を有し、かつ触媒·生成物の分離、触媒の再使用が容易な「分子固体触媒」を開発した。本講演では、我々の分子触媒、分子固体触媒開発に関する代表的な成果を中心に述べる。