製造プロセスの省エネ性評価に関するいくつかの考え方について

摘要

環境効率（eco-efficiency）という考え方は，近年産業のサステナビリティを考える際に重視されている．生活の質の向上と環境負荷低減を両立させるためには，このよう効率という考え方が必要だとされているからである．産業技術総合研究所においても，製品の価値，コスト，環境負荷を同時に考慮しつつ，設計支援を行うことのできるトータルパフォーマンス解析（以下TPA）という効率評価手法を提案している．しかし，環境効率やTPA において，製品価格を分子として単純に評価することは，価格がある程度製品の消費者にとっての価値を代表していると考えられるコンシューマプロダクトでは有効であろうが，販売戦略や社会情勢により価格が左右される場合や，絶え間ない技術開発により品質の向上が図られている製造プロセスの評価には適当でないと考えられる．例えば，高度な技術により平滑な表面加工が可能となり，摩擦力の低減，ライフサイクルにおける省エネに結びつくような場合でも，必ずしも価格の向上に結び付くとは限らないし，製造時の環境負荷はむしろ増加することさえ考えられる．このような場合，従来の方法では新しい製造プロセスの意味を正しく評価していることにはならない．そこで本報では，評価対象の製造プロセスによって獲得される品質（主として材料物性）を考慮することにより，製造プロセスの真の省エネ性を評価する方法を提案するとともに，従来方法による評価と比較することを試みる．