点滴投与量計測用マイクロ流量センサの開発

摘要

医療現場では，投与速度を高精度に維持管理しながら一定時間内に薬剤を投与する精密持続点滴が行われている．特に抗がh剤などの化学療法では，薬効および副作用の観点から投与量と投与速度が厳密に定められている．現行の点滴では，チューブ内を流れる薬液を液滴状にして点滴筒に滴下させ，その液滴滴下数をカウントすることで薬剤投与速度を計測している．しかしながら実際には，薬剤の違いにより薬液の化学的性質のみならず物理的性質（粘度，表面張力など）が変わり，液滴一個の体積が変化する．即ち，現行の点滴投与システムでは，様々な薬剤に対して投与速度を高精度に計測することが難しく，その結果，薬液の違いにより，投与速度は最大で±10%の誤差が生じると言われている．一方で工業的用途に用いられる液体流量計測技術に目を向けると，流路内に設けた浮子の運動で流量を計測する方法が主流となっている．しかしこの方式では，センシング部として機能する浮子（可動部）を流路内に設置する必要があるため，小型化に限界があり，細径チューブには適用しづらいという課題がある．そこで本研究では，点滴投与時の薬液流れを高精度に計測可能な点滴投与量計測用マイクロ流量センサを開発する．具体的には，細径チューブ内に実装可能な方式として，可動部を一切必要としない熱式原理を採用し，本方式を用いた液体流量センサのプロトタイプの作製技術及び微小流量領域での流量計測特性を検証した．