観光産業の発展戦略

摘要

訪日外国人旅行客の増加に伴い、観光産業における事業体系の再編や業務プロセス、あるいはロードマップにおける上の段階の数値目標までのフェーズにおける産業戦略が注目を集めている。我が国の国民の国内旅行の回数および宿泊数は過去10年間でおよそ2割の減少であり、今後の観光産業の発展においては、訪日外国人旅行客のさらなる増加が鍵となる。訪日外国人の旅行に対する産業戦略として、（1）経済効果ベースの観光振興戦略、（2）世界経済ベースの観光振興戦略、（3）業態ベースの観光振興戦略などに分類できる。また、それらについて、概して（イ）興味深いコンテンツの有無や豊富さ、（ロ）他地域や外国との競争力、（ハ）対象とする業種でのシュア、（ニ）費用対効果や利潤の大きさ、（ホ）対象とする観光産業の成長性、（へ）社会的責任などの観点において、観光産業のカテゴリごとの戦略立案について、上記の観点で慎重に分析し、政策を推し進めることが望ましい。例えば、（1）については、東アジアからの観光客の場合、欧米やその他の地域の観光客よりも日本でのショッピングの支出額が多く、その観点において経済効果は高い。従って、そこを狙うとすれば、東アジアからの観光客数が伸びている地域においては、旅行者の旅行目的のうち重要とされるショッピング活動をより効率的および効果的にできる環境整備とそれに関するプロモーションが必須となる。ここでの評価ポイントは、（イ）興味深いコンテンツや（ニ）費用対効果などが鍵であると考えられる。また、（2）については、例えば現在においで台湾からの旅行者が多い地域の今後の観光振興戦略について考えれば、近年の台湾の所得の増加水準をみれば、近い将来において日本ではなぐ欧米に旅行先がシフトする可能性が考えられる。従って、今後急速な発展が予想される東南アジアを中心としたマレーシアやタイなどをねらった観光振興戦略が考えられる。ここでの評価ポイントは、それらの旅行者にとって（イ）興味深いコンテンツをそろえられるか、および他地域に比べて（ロ）競争力や（ハ）シェアを持てるかということが関連する。一方、（3）については、インセンティブツアーやエコツーリズムのような観光産業の業態をしぼったもので、例えば世界を牽引する水準の産業と日本独特の景勝を兼ね備えた地域がそれらを推進できるコンテンツや他地域との競争力などが関連する。これらの観光振興の発展に関連して本稿では、次の4つの点について言及する。まず、2．においては、情報社会における観光産業の戦略を説明する。次に、3．において、我が国の「おもてなし」を強化する観光経営戦略、4．において、カジノを含めたIR発展戦略、さいごに5．において、MICE産業の発展戦略について説明する。