過冷度,氷結晶の形状·寸法と氷の凝集力の相関に関する検討

摘要

氷スラリーは，細かい氷粒子と水溶液からなる流動性を持った氷である．従来の液体単相の冷熱輸送媒体と比べると，氷スラリーは氷の潜熱を利用することができ，蓄熱密度が大きい．また，採冷熱過程における熱負荷追従性，流動性の点で優れていることから蓄冷熱システムの熱輸送媒体として利用される．実機を想定すると，深夜電力を使用して氷スラリーを生成し，早朝や昼間に使用するために貯氷しておく必要がある．貯氷する際，時間経過に伴い氷粒子が凝集する．凝集とは，氷スラリー全体に分散している氷粒子が浮力により密集するクリーミング，また粒子の分子間力による粒子の付着，そして付着した氷粒子が合一(オストワルド熟成)することによる氷粒子の大きさや形状の変化によって生じる．この凝集が生じると，氷結晶の形状変化や氷塊化に伴い，伝熱特性の低下，流動性の低下が起こる．氷粒子の凝集に関する研究は，これまで様々な溶液，添加剤を用いて氷の粒子径を測定することで行われてきている．しかし，氷粒子の凝集は複雑であり，使用する溶液，添加剤により大きく異なった結果となる．そこで，本研究では氷粒子の凝集の本質的な解明のため、純水で氷スラリーを生成する．そして，過冷度を変えることで，氷粒子の変化を観察する．さらに，生成された氷粒子の凝集力の測定と氷中に含まれる水分量を評価することで，氷の凝集に関して検討する．