Ag含有リン酸カルシウム焼結体の溶解性および抗菌性評価

摘要

骨腫瘍や人工関節のゆるみ等の骨の疾患そのものや、その治療において病変部を外科的に切除することにより、骨に欠損が生じる。このような骨欠損部へは、リン酸カルシウム系材料の補填が有効な治療方法の一つである。リン酸かレシウム系材料には、擬似体液中への溶解性の低いハイドロキシアパタイト（Ca_(10)(PO_4)_6（OH)_2, HAp)および溶解性の高いβ型リン酸三カルシウム（Ca_3(PO_4)_2, β-TCP）が一般に骨補填材として用いられている。リン酸カルシウムの補凰こは、患部の切開が必要となるが、その際に、材料表面に付着した菌による手術部位感染(SSI)が問題となっている。材料ヘの抗菌性付与がSSI予防に有効であるが、本研究では抗菌性元素としてAgに着目したAgは多くの細菌に対して有効、耐性菌を生じにくい、といった特徴を有しており、徐放した塵イオンにより抗菌性を発現する。一方、過剰な塵イオン溶出は、細胞毒性を示す。そこで本研究では、Ag含有量およびリン酸カルシウム相の異なるAg含有リン酸カルシウム焼結体を作製し、擬似体液中への溶矧生抗菌性および細胞毒性を評価した。