いのちを知り生かす身心一体科学～動的不安定性原理で進化した細胞·身体の制御·適応システムと開発事例

摘要

人間は自分がわかるようにつくられていない。身体は、自然が生み出したきわめて精緻なシステムであり、37兆個にも増えた受精卵のクローン細胞たちが生きる場である。多細胞生物である人間の身体は、これらの細胞と細胞が分泌する細胞外基質分子（ECM）から成る。生命の単位·細胞は活動依存性に生存するシステムである。それゆえ、分化·未分化の細胞たちが、適切な身体内の場において、本来もっている能力をいかし活動し続けられるような身体活動原理を研究する領域創成が必須である。人間の脳は自身の身体を適切に制御する科学を必要としている。「身心一体科学」は、考える対象となっていない自分自身の「からだ」を、進展著しい細胞生命科学や脳科学·運動学から説明し、同時に自分自身の「からだ」を使って、やってみて観察·評価し、気づきも含めて言語化する新しい科学（教育·研究）領域である。