長手方向の筋隆起位置変化に基づく手関節角度推定に対し関節負荷が与える影響

摘要

本研究は，関節角度を制御可能な動力義手を開発するため，高精度な関節角度推定手法を検討する．前腕部の関節の中でも，手関節は食事等の両手動作時に義手でお椀等を操作する際に重要であるため，手関節を対象とする．意図する手関節角度を推定するためには，生体から計測可能であり，意図する動作量を表現する情報が必要である．筆者らは筋収縮に基づく生体情報として，皮膚表面上における長手方向の筋隆起位置変化に着目し，手関節角度の推定を行ってきた．ここで，本研究における筋隆起位置変化とは，「手関節を操作する際の主動筋の収縮による筋形状の変化によって，皮膚表面の盛り上がる位置が筋肉の付着方向に沿って前腕長手方向へ移動する現象」と定義する．これまで，手関節角度変化量と筋隆起位置変化量の間に1対1関係が認められることを明らかにし，両者の関係式を用いた手関節角度推定の可能性を示している［5］．しかし，当検討では前腕に外的要因が加わらない限定的な条件下における有用性を示しているのみである．本研究の目的は，筋隆起位置を用いた関節角度推定手法の適用可能性を広げるため，筋収縮量に大きく影響を与える外的要因として関節にかかる負荷の影響を検討することである．