ドア組付作業支援ロボットD-PaDY 第1報 コンセプトの提案

摘要

工場の生産ラインでは，産業用ロボットを用いた自動化が進hでいる．自動車の溶接工程ではロボットアームを多数使用し，生産ライン上の車体の溶接を全自動で行っている．また近年では，図1 に示す川田工業のNEXTAGE のように，フレキシブルな自動組立ラインを実現するための双腕ロボットが多く研究されおり，実用化も始められている．一方で，自動車の組立工程のように未だに人の手に頼らざるを得ない工程が数多く存在している．その要因としては，工程の組換えが頻繁にあることや，ハンドリングの困難な部品が多数あることから，ロボットでの置換えが困難であることが挙げられる．これらの作業には，組付けのための工具や部品を取りに行くなどのわざわざ人が行わなくて良い作業が付随されている．そこで本研究室では，作業を完全に自動化するのではなく，人にしかできない作業は人が行い，ロボットは状況を判断し，人が作業を行いやすいようにサポートすることで効率化を図るロボット「作業支援パートナロボット」が有効であると考え，開発を行っている．パートナロボットによって「必要なときに，必要な物を，作業者の手元へ」を実現させることによって，作業者はわざわざ人が行わなくて良い作業をする必要が無くなり，作業効率の向上を図ることができる．また，必要な工具や部品のみを供給するため，誤って別の部品を組付けてしまうといった作業ミスの未然防止の役割も果たす．これらのコンセプトを基に開発されたロボットが図2 に示す組立作業支援ロボットPaDY(in-time Parts/tools Delivery to You robot) である．このパートナロボットは，ロボットによる自動化が難しい組立工程において，作業に応じて必要な工具や部品をロボットアームにより作業者の手元へ配送する手元化を行うことで作業支援を実現するロボットである．これによ図1 NEXTAGE[1] り，作業者は部品の選定，工具の取り出しなどの作業をせずに済み，なおかつ，工具や部品が搭載されているワゴン台車まで移動する必要も無くなるため，作業ミスの未然防止や作業の効率化の実現ができる．作業者は，各作業において場所·時間·部品·工具などが定められている工程表に従って作業を行うことを求められているものの，実際には各作業者によって作業をする立ち位置や作業箇所間の移動経路にばらつきがある．そのため，作業者に合わせてロボットが適切なサポートを行うためには，作業者に応じてロボットが工具や部品の供給時間や供給場所を適応的に変化させる必要がある．そこで当研究では，作業者の行動を統計的に解析することで，作業者の行動に応じてロボットが工具や部品の手元化を行う手法を提案し，組立作業支援ロボットPaDY を実際の自動車の組立工程に導入することで，作業ミスの未然防止や作業効率の向上を実現した．