社会脳ネットワークにおける2つの経路読む心、読まれる心の脳内再現

摘要

人間の社会は他者を理解し、他者から理解されることで成り立っている。このような他者とのインターラクションの中で我々は自己の社会的行動を決定している。したがって、相手がどhな存在なのかに依存して我々の社会的行動は変化する。言語による直接のコミュニケーション以外の手段で、相手が今何を考え、どういう行動を計画しているかを推測するためには、相手の表情や行動の変化などに関する視覚系からの情報が有用となる。脳の視覚情報処理においては、2つの異なる情報処理経路があることが知られており、1つは視覚野から頭頂葉へと向かう背側経路、もう1つは視覚野から側頂葉へと向かう腹側経路である[1]。前者はwhereまたはhowの経路と呼ばれ、外界の物体が自分に対してどこに位置しているかを分析するための経路であり、これは物体の到達把持行動のために重要な経路である[2]。後者はwhatの経路と呼ばれ、物体の形状や色など物体の特徴を分析して認識するために重要な経路である。人間の体性感覚システムにおいても、このような、機能志向型の情報処理過程が存在し、四肢の位置や動きを分析して短潜時で効率的な運動出力を可能にする経路(体性感覚野から運動領野へ)と、手に触れた物体が何であるか、その特徴を分析して統合するための経路(体性感覚野から頭頂葉へ)が見られる[3]。これらに加えて、最近、我々は、人間の社会脳においても、他者を心の保有者として認識し、その心を積極的に読もうとする経路と、知性のある他者に自分の心が読まれている可能性を察知し、これによるリスクを推定する経路があることがわかってきた。