経験と対話からの言語記号の創発－Bayesian Linguisticsに向けて

摘要

生活支援ロボットなどを中心として，ロボットが，工場などの整備された環境だけでなく，日常生活の中でも使われてゆくことが期待されている．そうした場面において，人間とロボットとのコミュニケーション，意思疎通をいかに円滑化するか，は重要な課題の一つと認識され，音声対話システムの研究などが続けられてきた．音声対話システムは，大規模な言語データや音声データが利用可能となったことから性能を向上させており，携帯端末上での情報提供サービスを中心として実用化が進hでいるが，現状のシステムは，狭い対象領域に関する，作り込まれた対話シナリオに基づく対話，Siriなどの対話システムに代表される，幅広い話題に関する一問一答形式の対話，人工無能などと呼ばれる反射的なパターンによる対話，のいずれかであり，幅広い話題に関して意味理解に基づいた人間同志のような円滑な対話をするには至っていない[8]．ましてや，人間のように，経験と対話を通じて言語能力を獲得するシステムの実現は，依然として人工知能研究の挑戦的課題の一つである．本発表では，この課題に挑戦する研究について述べる．まず，記号創発，特に，経験と対話からの言語記号の創発という問題を紹介し，確率モデルをベースとするシステムの構築に向けたアプローチについて述べる．