回転傾斜露光法を用いた三次元マイクロ鋳型作製と細胞固定デバイスへの応用

摘要

μ-TAS(micro Total Analysis System)技術を用いて、微小流路内で生体細胞を操作するデバイスが開発され、単細胞レベルでの刺激応答解析や、遺伝子導入デバイスなどが開発されている。関連して様々な細胞固定手法とそのためのデバイス作製法が提案されているが、従来のデバイス作製の多くは、複数回のアライメントを必要とし、そのプロセスは複雑で形状によっては作製が困難となる。そこで、我々は、微細三次元形状のアライメントレス加工が可能な方法として、回転傾斜露光法を用いて、厚膜レジストSU-8 が直接塗布されたマスク基板を回転させながら斜めに露光することにより、一度の露光で多数のマイクロ流路とオリフィスからなる吸引固定型細胞アレイを作製し、遺伝子導入などへの応用を行ってきた。これまでの研究では、コピーしたマスクを基板としたSU-8 製デバイスを作製していたが、SU-8 の自家蛍光により、蛍光観察が困難となる問題が生じた。そこで本研究では、回転傾斜露光法により加工できる特徴的な構造を抜き勾配として利用した、PDMS モールディングを用いたマイクロデバイス作製法を提案し、圧力差を生成する2 流路型細胞固定デバイスを試作、評価を行う。作製するデバイスは、2 本の近接した流路を結ぶように設置した高さの異なるマイクロオリフィスを複数本有し、2 本の流路に流れる流体の流量を独立したシリンジポンプによって調整することで、細胞固定時にオリフィス部に流れる流量を制御し、細胞懸濁液、試薬の送液と細胞固定を行う。まず初めに、等価回路解析を用いて、オリフィスの流量を計算し、デバイスの設計を行う。次に、提案する回転傾斜露光を用いてSU-8 製マイクロ鋳型の作製を行い、提案する手法で2 本の流路と、高さの異なるオリフィスの鋳型を、一度の露光·現像で形成する。最後に、作製したデバイスを用いて、蛍光ビーズの吸引固定実験を行い、提案する加工方法とその応用例の有用性を検証する。