エアロゾルデポジションによる酸化物高温超伝導体Bi-Sr-Ca-Cu-O 薄膜の作製と評価

摘要

酸化物高温超伝導体は超伝導転移温度 (T_c) が液体窒素の沸点温度(77 K) を上回るものがある。ヘリウムガスの価格が高騰化している昨今の状況を考慮すると冷却に要するコストが大きな課題となるが，それらは冷却に液体窒素を使用できる。それらは第二種超伝導体であるために臨界磁場が高く大電流が流せるため送電用の線材への応用が期待されている。現在，線材を作製する場合リボン上基体上に超伝導体が堆積したものが提案されているが，製作や補修が困難である。本研究では常温で高密度な膜が堆積可能，かつ原料の結晶構造を維持した膜を作製することが可能なエアロゾルデポジション (AD) に着目し，酸化物高温超伝導薄膜を直接基体上に成膜し，特性を評価してきた。AD は結晶性微粒子を出発原料とし，ガスと混合してエアロゾル化し，ノズルを通して基板上に噴射・衝突させ成膜する技術であり，スパッタリング法等のように高真空を必要とせず，成膜速度が大きい利点を有している。そのため成膜時間の短縮が可能であり量産性が高い。前回は，酸化物高温超伝導体の1 つであるBi_2Sr_2Ca_2Cu_3O_y (Bi2223)を出発原料とするために鉛(Pb)を添加した仮焼成粉末を用い，Ag 基板上に基板温度200°C で成膜後，900°C 付近で熱処理を行い，引き続き低温で熱処理を行った結果， 61K の Tc を達成した。しかし超伝導体薄膜の結晶構造はBi2223 ではなく主としてBi_2Sr_2Ca_1Cu_2O_y(Bi2212)であった。今回，Bi2223 を出発原料である出発原料とするためにBi2223 を合成することから始め，それを用いてAD によりAg 基板上に成膜を行ったので報告する。