物体の顔らしさが右向き選好に及ぼす影響

摘要

ヒトには，利き手や言語の記述方法など，左右のうち片方を好むような選好の左右差が存在する．この選好バイアスは顔向きに対してもあらわれることが知られている．顔は正面から見た場合，左右で微小な特徴の違いがみられることが一般的である．この左右差による影響であるかは未だ明らかになっていないが，肖像画上のモデルは正面からよりも左右どちらかに顔を向けたものが描かれている場合が多く，16–20 世紀に描かれた肖像画の顔向きを調査した研究では，モデルの表情によって顔向きが左右どちらかに偏る結果が示されている．この顔向きの左右差は肖像画のみならず，自身の顔を撮影する際にも起こり，左頬を前（右向き，観察者から見て左向き）にして撮影した写真がより多いことが報告されている．また，顔向きに対する選好の左右差は観察側においても起こり，ヒトの写真に対する選好は被写体が左頬を前に向けているものがより高いことが報告されている．このように，顔に対する選好の左右差については多く調査されてきているが，そのような左右差が生まれる要因については未だ明らかになっていない．