中国天津における英租界推広界の開発経緯に関する研究

摘要

天津では19世紀半ばから9カ国によって租界地が造成され、一時期は同時に八カ国の租界が存在した。租界空間は中国国内において最大規模のものであった。その中で、天津の英租界は1860年のアロー戦争以後最も早く開設され、その後３度に亘って拡張が行われ、天津で最も面積の広いものとなった。今日に至るまで天津の都市の近代化に多大な影響を与えている。第三次拡張域であるBritish Extra Rural Extension（推広界）の五大道地区においては政府要人を始めとする多くの上流階級が土地を購入し、住宅を建設して、高級住宅地を形成した。特にこれらの住宅建築は洋風の戸建て住宅という意味で小洋楼と呼ばれ、天津の特色となっている。これまでの研究では天津の各租界の進展に伴って、敷地用途の変化や、英租界五大道地区の建築の非住宅化について分析している。本研究では英租界の推広界の造成経緯と上流階級の住宅地として形成された要因を英租界工部局の年度報告、当時の文献、法規、章程等を用いて解明するものである。