クリスタル・パレスの施工プロセスについて 同時代史料の整理

摘要

建築の生産技術の記録はこれまでも存在してきたが、本来は接続されるべき生産技術の記録と建築史が無関係に記述されてきた／あるいは建築史という枠組みの中で捉えられてこなかった。施工プロセスに着目することで、歴史的建築物の成り立ちを理解し、そこで用いられた技術や関わった人物を通して同時代状況との接続を図れるのではないか。19 世紀英国では「鉄」という新素材が媒介となることで、建築に関わるプレイヤーたちの協働関係が生じていたのではないかと筆者は考えている。ケーススタディとして、2 つのクリスタル・パレスを取り上げる。1851 年万国博覧会会場としてロンドンのハイドパークに建設された仮設建築物（the Exhibition Building in HydePark）と、それを解体・移築して同じくロンドンのシドナムの丘に建設された恒久建築物（the Crystal Palace atSydenham）は、いずれもクリスタル・パレスと呼ばれた（前者は愛称として、後者は正式名称として）。