火星高層大気と宇宙機との相互作用に関する研究(1) レーザーデトネーション法による超熱二酸化炭素ビーム形成

摘要

火星の高層大気組成はCO_2、O などが主体である。中でもCO_2 は地球周回軌道上に多く存在するN_2 やO と比較して分子量が大きいため、探査機との相対衝突エネルギーも大きくなる。またCO_2 は化学的に安定であるため、衛星材料の材料劣化は生じないと考えられてきたが、地球軌道上でもO 以外の高エネルギー衝突による材料劣化が疑われる事例があることから1)、火星軌道でも物理化学的な衝突誘起劣化メカニズムにより材料劣化が生じる可能性がある2)。さらに、火星高層大気中の探査機材料表面では、高い衝突エネルギーを有するCO_2 と化学的に活性なO の同時衝突が発生するため、複合衝突効果により固体表面反応メカニズムが地球周回軌道上におけるものとは異なる可能性がある。しかしながら、このような火星大気での材料劣化に関わる研究は全く行われておらず、その劣化現象発現の可能性も含めて検討する必要がある。