脳機能解明を目指したマルチスケールイメージング

摘要

近年，脳の透明化技術の発展やc-fosなどの最初期遺伝子を固定標本で観察する方法により，生化学的に脳機能マッビングを行うことができるようになってきたが，神経活動のダイナミクスを計測する生理学的な脳機能マッピングを多階層で行う技術は十分ではなかった。ここで提案した3-ステップマルチスケールイメージング法は以下のように用いることで真価を発揮する。ある操作を加えた個体に対して，(1)qAIM-MRIにより神経活動が変化する領域を同定する。(2)qAIM-MRIで同定された領域に対して，U-FEISでイメージングすることにより，全脳の中の局所回路のダイナミクスの変化を明らかにする。⑶U-FEISで計測した領域の脳スライス標本を用いて，ダイナミクスの変化を引き起こす分子的メカニズムを同定する。加えて，同定した分子的メカニズムに操作を加えた個体に対して，(3)→(2)→(1)のように逆方向の計測を行うことにより，必要条件だけでなく十分条件を得ることができ，ある脳機能発現のメカニズムを明らかにすることができる。また，ここで提案する3-ステップマルチスケールイメージンダは同一個体に適用することができる方法であり，それにより真のマルチスケール計測を実現することができる。この方法により，さらなる脳機能発現メカニズムの解明が加速されることを期待する。