人工フェリ層/MgO/フリー層構造を有する磁気トンネル接合系におけるスピントルク発振モードシミュレーション

摘要

CoFeB/MgO/CoFeB卜ンネル接合構造を持つMgO-MTJ型スピントルク発振素 子（Spin-Torque Oscillator; STO)は，応用上有用な高出力STOとして関心を集めて いる.今回，典型的なMgO-MTJ型STOである，PtMiVCoFe[L3]/Ru/CoFeB[L2]/ MgO/CoFeB[L1]構造[Fig.1]を対象にスピントルク発振モードのシミュレーショ ンを行った.CoFe[L3]/Ru/CoFeB[L2]は人工フェリ（Synthetic ferrimagnetic; SyF) 構造であり，CoFeB[L1]はフリー層(FL)である.従来の発振モード解析において は，SyFあるいはFLのー方の磁化が固定していると仮定することが多いが，今回 は，SyF磁化，FL磁化のダイナミクスを同時に考盧し，さらに，3つの強磁性層 (L1,L2, L3)間の磁気双極子相互作用を取り入れることで，SyF-FL間に生じる動的 な磁気双極子相互作用が発振モードに及ぼす影響に注目した.マクロスピンシミュ レーションを行った結果，面内バイアス磁場H_(bias)の大きさに依存して，特徴的な 2つのタイプの発振モードが見出された.