展示室の形態とトップライトの配置と美術品の展示:現代の美術館におけるトップライトによる展示室への採光手法（その1）

摘要

上方から室内に採り入れられる光は空間の印象に大きな影響を与える要素の一つであり、歴史的な美術館にも多くみられる。美術館の展示室では、壁面の展示点数の確保や、逆光を避けるためにトップライトから採光することは有効な方法の一つである。現代においては、美術品に対する採光の価値観の変化や現代美術における表現の多様化に伴って、トップライトによる展示室への採光にも多様な方法が試みられているといえる。たとえば、美術館全体に反復されたトップライトの下に複数の展示室が分節され配置されている美術館や、異なる採光方法による展示室が分散して配置されている美術館などがみられ、これらは展示室ごとのトップライトによる採光手法と、それらの組合せによって特徴付けることができると考える。本研究は、トップライトによる展示室への採光を行う美術館を対象に、展示室の形態的な特徴と、トップライトと美術品の関係から採光手法を捉え、さらに展示室同士の採光手法の組合せから美術館における採光手法の特徴の一端を明らかにすることを目的とする。本編では展示室の形態と、トップライトの配置と美術品の展示の関係を考察する。