現代の美術館建築における室と仕上げのレイアウトによる空間の統合手法

摘要

近代以降、素材の技術革新は建築表現に数々の拡がりをもたらした。G.ゼンパーは、「覆う•囲む」ことによって生まれる「空間」の概念の導入に加えて、「いかなる技術的所産も目的と素材の結果である」~(注1))「理念の単純な表現としての基本形式は、特に更に形式を形成していくさいに用いられることになる素材、そしてそのとき使用される道具に従って修正されていく」~(注2))と、素材の重要性について様々な著作で言及している。またA.ロースは論考『被覆の原則について』において、「空間の目的を充足させる効果は、材料と形態とによって引き出されるのである。」~(注3))と述べ、R.M.シンドラーは論考『VisualTechnique』の中で、「素材は強さばかりではなく空間の特質に貢献するものも備えており、色やテクスチャーも同様である。」「建築家はテクスチャーの使用を通して彼の空間形態を分節すると言ってよい。」~(注4))と述べているなど、近代以降の建築の読解と設計には、空間の形態に関わる構成的な性格と、その表層に為される仕上げといった表面的な性格の、相補的な関係性を見据える視座が不可欠であると考える。