人間の視覚認識における錯視イメージの時空間遷移

摘要

錯視に関する研究は様々な手法で行われている.例えば病気によって中心視を失った患者と健常者を比較した結果, 錯視の認識力の差がないことが確認されている. また別の論文では周辺視と中心視による錯視の認識力に差はないが, 運動開始点を注視した場合と運動到達点を注視した場合では認識力が異なるという結論が述べられている. 錯視量を, 時間変位による条件付けで検証した研究にはMaurizio et al. 等があるが, その詳細については議論がされていない.本研究では, モーションキャプチャシステムと視線計測機を用いて, Muller-Lyer 錯視を提示された状態で被験者が行う上肢運動について調べた. 特に錯視の視覚情報が与えられた後, 上肢運動に錯視の影響が出現する間で, 視線を拘束する空間拘束と遅延時間の時間拘束の両者の視点から, 錯視が及ぼす影響を解明している.