水上交通を活用した地域活性化に関する研究: 徳島県徳島市新町地区を対象として

摘要

わが国における水上交通は、鉄道網が整備された20 世紀の初頭まで、都市間をつなぐ重要な役割を担っており、都市における文化の発達にも寄与していた１)。しかし、高度経済成長期に入ると、モータリゼーションの進展により、交通の主役が自動車に変わり、水質悪化も相まって河川は都市における｢裏側｣に位置づけられ、水上交通も衰退していった２)３)。こうした社会状況のなか、交通機関としての水上交通は衰退したが、水上交通を利用していた歴史･文化を持つ都市においては、観光船や遊覧船といった水上交通を活用することで、観光の活性化など地域の振興に寄与している事例がみられる１)。そのなかでも、水上交通による地域活性化が長期間にわたって展開されている徳島県徳島市新町地区(以下、新町地区)においては、遊覧船の運行を契機に、水辺のイベントをはじめとしたにぎわい活動が開始するなどの成果がみられる。さらに、2009(平成21)年から、水上交通によって地域間を繋ぎ交流を促す新たな取り組みが開始したことから、他地域との連携による地域活性化への相乗効果が期待される３)。これらより水上交通は、単ー地域の活性化はもちろんのこと、他の地域へと波及させる手立てとしても可能性があるものと考える。