中華民国の天安門広場に関する研究:辛亥革命以後における交通開放のプロセスについて

摘要

天安門広場は中華人民共和国の首都・北京の中心に位置し、毎年の国慶節や国際労働節には大規模イベントが実施される巨大な国家広場である。この著名な広場は、すでに様々なかたちで分析されてきている。しかし、その大半は、天安門広場の明清時代における「禁忌の広場」としての性格と、新中国における「政治広場」としての性格を強調して対比させる点に特徴があり、二つの時代に挟まれた中華民国における空間形態やアクティビティの変容については軽視されている。実際、論拠が曖昧なまま誤魔化されている場合も目立ち、「禁忌の広場」であった天安門広場が一般に開放されていく空間変容のプロセスについても、詳細な検討は加えられてきていない。そこで本稿では、封建制の終焉を告げる1911 年の辛亥革命以後、天安門広場がどのように市民に開放されたのか、広場を形づくる城壁と城門に対する改造行為に注目することで、明らかにする。