瞬間誘導ラマン分光のMaxwell/TDDFT/MDマルチスケール シミュレーション:ダイヤモンドにおけるコヒーレントフォノンのポンプープローブ分光シグナルの解析

摘要

物質中の電磁波の伝搬を記述する Maxwell 方程式と、原子・ナノスケールにおいて第一原理的に電子ダイナミクスを記述する時間依存密度汎関数理論(TDDFT)の異なる二つのスケールを組み合わせたマルチスケールシミュレーション法が当研究グループにより開発されてきた。この手法では実験系全体を模倣することができ、透過や反射といった一連の分光プロセスの結果として得られる非線形性まで含む観測シグナルを直接的に再現することができる。本発表では、その手法に原子核のダイナミクス(MD)を導入した Maxwell/TDDFT/MD マルチスケールシミュレーションの開発および瞬間誘導ラマン分光への適用を報告する。本計算では図(a)に示すように、マクログリッド(幅=15nm)で記述した電磁波(今回は一次元)と、各マクログリッド点での原子・電子状態を表すダイヤモンドの単位セル(三次元周期系,一辺 3.57Å)を与える。ミクロレベルではTDDFTに従った電子の波動関数とカップルして原子核についてのニュートン方程式を解く。波動関数と核の運動から得られるミクロレベルの電流密度と巨視的なベクトルポテンシャルが両スケールを繋ぐ媒介物理量となり連立した方程式を解いてそれぞれの時間発展を得る。